日別アーカイブ: 10/28/2025

職業芸術家グループКукрыниксы(ククルィニクス)

ククルィニクス(Кукрыниксы)という、ソ連時代に活動した3人のグラフィック・風刺画家グループがあります。 去年の11月にモスクワ「マネージュ(Манеж)」というクレムリンの近くにある場所で展示会が開催されていました。、展覧会はこのククルィニクスの結成100周年を記念したもので、地元ではとても珍しいとされて、私も展示会に足を運ぶことができたので、少しだけ内容をアップしてみたいと思います。

ククルィニクスは、1920年代から、20世紀後半まで活動していた風刺画家グループで、ミハイル・ワシーリエヴィチ・クプリヤーノフ(Михаил Васильевич Куприянов) 1903-1991、ポルフィーリー・ニキーチチ・クリロフ(Порфирий Никитич Крылов) 1902-1990、ニコライ・アレクサンドロヴィチ・ソコロフ(Николай Александрович Соколов) 1903-2000という、絵がめちゃくちゃうまいプロフェッショナルな画家達で構成されています。

展示会の入り口

「ククルィニクス」の名称は、3人の名前の頭文字・音節から作られたもので例えば「КУ(п­риянов)+ КРЫ(лов)+НИКС(околов)→ Кукрыниксы」のようになります。

当時、新聞・雑誌・政治ポスター・挿絵などを共同制作し、 風刺・政治風刺・プロパガンダ的なポスター・カリカチュア(風刺画)などが有名です。今回、個人的に初めて知ったのが、雑誌・新聞だけでなく、本の挿絵、版画作品等もあり、ジャンルは幅広いです。

さて展示会では、年代別・主題別に分けられており、1920〜30年代、第二次世界大戦期、ニューンベルク裁判関連、冷戦期など、歴史の流れを網羅していました。

こちらは、クプリヤーノフ氏自身の作品。モスクワでグラフィックを勉強。ククルィニクスの集団創作の中核を担いました。

クプリヤーノフ氏自身の作品

こちらは、クリロフ氏自身の作品。モスクワからそう遠くない、トゥーラの出身。工場で勤めながら美術スタジオや、有名な近代画家お師匠さん達のもとで美術を学んだらしいです。展示会であった彼の作品は肖像画、風景、静物等。生活の中の自然や日常を丁寧に温もりあるタッチで表現されているな、と言う印象でした。

クリロフ氏自身の作品

こちらは、ソコロフ氏自身の作品コーナー。なんと96歳(2000年)までご健在だったそうです。グループの中で活動期間が最も長く、個人作品の中にはゴーゴリ等、ソ連文学作品の挿絵 も手掛けてます。彼の個人作品を見ていると、この当時社会主義リアリズムの要素を必要とされながらも、その中にユーモアと人間味が滲み出る作品を残したのが伝わってきます。

ソコロフ氏自身の作品

さてさて、こんな人たちが活動していたククルィニクス。こちらは、その当時ククルィニクスが活動していた時の彼らの動画が展示されていました。

第二次世界大戦期には、ナチスを風刺するポスターで有名になりました。鋭い批判精神と強烈な表現で、見る人の度肝を抜くすごさがあるけど、ずっと見ているとちょっと辛いです。

こちらは、冷戦期のコーナに展示されていたククルィニクスの作品。1980年モスクワ・オリンピックの政治的ボイコットを風刺したものです。モスクワ・オリンピックのマスコット「ミーシャ」が西側を象徴する人に向けてイエローカードを掲げています。ソ連側は、スポーツに政治を持ち込む西側こそルール違反だ、との立場。クマの「ミーシャ」が可愛いけど、内容は真剣です。

などなど、本当に面白い展示内容だったけど、ユーモアや挿絵系よりも、政治や戦争のモチーフが圧巻して、見てて思い感じの雰囲気になるところもありました。

今回、100周年記念として大々的にククルィニクスにスポットに当て、政治や戦争が語られたのも、ある意味今のこのご時世を反映した部分も多かったのかな、というの感じました。とは言うものククルィニクス自体もそうだし、それぞれの作家のプロフェッショナルさもある意味、じっくり見ることができて大変面白かったです。

ということで、まだまだ書き溜めているものはあるけど、とりあえず先にアップしたいものはできたかと。ただいまアルメニアのエレバンへ出張中。このまま飛行機でモスクワに行けそうですが、今回エレバンとその周辺をじっくり見てきます。また落ち着いたらブログをアップしたいと思います。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ブログ内でイタリアについての記事は、「あれこれ日記 in Italy*。」のカテゴリー、ロシアについての記事は「あれこれ日記 in Moscow*。」や「Are-kore diary in Moscow*。」のカテゴリーをご覧ください。 お仕事の依頼は、contactへお願いします。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


旅の指さし会話帳26 ロシア(ロシア語) 旅の指さし会話帳シリーズ