日別アーカイブ: 07/13/2021

自国産のスパークリングワインのみ「シャンパン」と呼んでもいい? ロシアのシャンパンスコエ、フランスのシャンパン:その①

7月2日にロシアのお酒に関する生産と流通に関する法律171-FZ*が改正されました。日本も含めて現地や海外のニュースは、「フランス産のシャンパンはロシアでは名乗れない」とか「ロシア産のスパークワインしかシャンパンと呼べない」などセンセーショナルなニュースですが、落ち着いて内容を読み解くと色々なことが見えてきます。ワイン業界の方だと、既に耳にされているかもしれないこのニュース。ここではポイントだけ押さえておきたいと思います。

まずは法の改正があったのは、ロシア国内のお酒に関する生産と流通に関する法律(No. 171-FZ)*で、ロシア側の解釈だと保護原産地呼称に関するものではないということ。今回の法改正は、例えば日本の企業だとロシアへの酒類輸入ライセンスに関わる内容となります。裏ラベルに示す実務上の表記に関するもので、表ラベルの表現についてはこれまで通りシャンパニューのワインだったら「シャンパン」のままで大丈夫となっています。

そして、何の法の改正があったかというと、これまでイタリアのプロセッコ、スペインのカヴァ等を含めスパークリングワイン全般が「スパークリングワイン(シャンパン)露:игристое вино (шампанское)」というくくりだったのが、法改正後で「ロシアのシャンパンを含むスパークリングワイン 露:игристое вино, включая российское шампанское」という表現になりました。シャンパンはロシア語で”シャンパンスコエ”というのもここで注目します。つまり、法改正後の”ロシアのシャンパン”という部分は、ロシア語の発音をそのままカタカナにすると”ロシースコエ シャンパンスコエ”となります。

産地の個性と品質を大切に守っているフランスのシャンパンが「スパークリングワイン」になってしまい、ロシア産のスパークリングだけが「ロシアのシャンパン」と呼ばせるなんて、シャンパンの名称をよく知っている日本人からしてもびっくりなニュースですし、もちろんロシア人にしてみても一見びっくりな法改定です。そして、なぜモエ.ヘネシーが法改正の知らせ後、インパクトのある形でロシア向け出荷を停止を発表した後、あっさりと新しいラベル換えをし輸出を続ける方向になったのか、どこかモヤモヤするニュースです。実は、この背景にフランスとロシアの色々な複雑な事情があるのも確かです。

この続きはまた明日。

 

*Law No. 171-FZ “On state regulation of the production and circulation of ethyl alcohol and alcohol products”:https://www.ecolex.org/details/legislation/law-no-171-fz-on-state-regulation-of-the-production-and-circulation-of-ethyl-alcohol-and-alcohol-products-lex-faoc028377/

 

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