日別アーカイブ: 06/07/2022

1980年代のロシアン・ロックシンガー「ヴィクトル・ツォイ」

ロシアにヴィクトル・ツォイ (Виктор Цой)というロックシンガーがいます。正確に言うと1990年にラトビアにて交通事故で亡くなってしまったので「いました」ですが、今でも多くのロシア人に愛されていてます。モスクワのアルバート通りの途中にヴィクトル・ツォイや彼のバンドをしのぶツォイ・ウォール(露:Стена Цоя)という壁があり、モスクワ観光に必ず通るアルバート通りの横道を入ったところに存在しているので、色とりどりに落書きされていてるのを見たことがある方もいるのではなのでしょうか。

さて、このヴィクトル・ツォイ。1962年にレニングラード(現サンクト・ペテルブルク)で生まれ、今も存命だったら60歳。今回はモスクワの中心街にあるマネージ広場で「ヴィクトル・ツォイ」展が開催さているので見に行ってきました。

展示会場が暗くて写真がぶれてしまいましたが、ヴィクトル・ツォイはだいたいこんな感じの人です。ヴィクトル・ツォイは苗字からも想像できるように、お父様が韓国系ロシア人。もしちゃんとしたポートレートが見たいようであればグーグルかなにかで”Viktor Tsoi” と検索してみてください。

ツォイは当時20歳だった1982年に、のちにソ連時代のカリスマ的な存在となるロックバンド『キノーォ』を音楽仲間と一緒に結成します。ツォイはボーカリストとして活動します。この頃は当局によってミュージシャンの歌詞がチェックされるのは当たり前の時代。ミュージック文化も公認か非公認かの区別がされます。そんな中、ロックバンド『キノーォ(露:КИНО)』はアンダーグラウンド・グループとしてデビューし、彼らの音楽は若者を中心に共感を呼ぶようになります。そして1980年代半はペレストロイカが始まりグラスノチ(情報公開)が推し進められるようになり、言論の自由化へと扉が開かれようとしていました。ペレストロイカ期の1986年に国営のレコード会社「メロディア」から「ノーチ(露:Ночь)」日本語に訳すと”夜”というアルバムが出てソ連全土で200万枚以上を売り上げる大ヒットとなります。この時期が海外からの情報や文化が入るようになって社会がすべて良い方向に向かって行ったかというと、規制文化からいきなり自由になるのはそう簡単ではなく国の発展において困難な時期だったことも確かです。

さて話を展示会に戻すと、テーマとしてツォイが影響を受けた西欧ミュージシャンのコレクションなんてもののありました。ペレストロイカ前は西欧文化が禁忌されてたといっても、完全にダメというわけではなかったのですね。

会場は支給されるヘッドフォンでツォイの音楽を聴きなら回ります。全てがツォイの世界に飛び込んでいるみたいな実体験ができて、インタラクティブな内容です。ツォイの生い立ちが分かる写真や、美術学校へ通っていた時の資料、後期にツォイが没頭して取り組んでいた絵画作品集なんかもすごく面白かった。

日本と関わりがあるところでいうと、ツォイ作の根付なんかの展示がありました。ミュージシャンとして有名になる前に木工職人として生計を立てていた時期があり、とても器用だったみたい。日本の根付にハマっていたことがあり、作っては友達にプレゼントしていたみたいです。それと、のちにミュージシャンとして有名になると海外でも活動する機会もでき、日本を旅行したことがあるみたいで展示会場では日本のインスタレーションがありました。あとでインターネットで調べたら、ツォイはサザンオールスターズの桑田さんに会ったことがあるみたいです。

次にツォイのファッションコーナーがありました。こちら下記の写真はツォイ・ブラック。黒でコーディネートされたスタイルです。昔からツォイは何だかブルース・リーに似ているなって思っていたのですが、やっぱりブルース・リーに影響を受けていたらしいです。他にも代表的なツォイ・ファッションである革ジャンのコーディネートなんてものもありました。今見てもかっこいい。

展示を一通りみ終わると、最後にお土産コーナーがあります。”СПАСАЕМ МИР”つまりSAVE THE WORLDと書かれたTシャツが売ってました。『キノーォ』にそういう曲があったかなと疑問に思ったので、家に帰って調べたら1986年にレニングラードで行われた『キノーォ』のロックミュージック・コンサートがこの名前だったそうで。どうしてコンサートにこのタイトルが付いたかは色々な憶測があるみたいだけど、当時ソビエトのロックミュージックを西側に紹介する活動をしていたアメリカ人ジョアンナ・スティングレイ(Joanna Stingray)が”СПАСАЕМ МИР”と書かれたTシャツをコンサートに持って来たのであろうとの記事もインターネットで見かけました。

ヴィクトル・ツォイは不自由の中で自由に生きようとしたミュージシャンとか、自由を歌う時代の反逆児とかとか言われるけど、私は全然そんなこと意識せずにずっと彼の曲を聴いていました。

というのも、後に女性シンガーがリメークして可愛っぽく仕上げて歌っているのを聴いたり、普段の生活でもピクニックでカラオケをするときに歌うシーンがあったりで、ツォイの音楽は親しみやすくて自分ととても近いところにいるからです。オリジナルを聞くとああ、哀愁こもっているな、とか歌詞がたまに何を言っているか分からないけどいい曲だとかとか。

一つ展示会へ行って驚いたのは、リアルタイムで聞いたことがないだろう若い年齢層の見学者が沢山いたこと。良い物は次の世代にも引き継がれていく、とってもいいことだなと思ったのでした。

もし、ツォイの曲を聴きたい方はこちらのユーチューブ、もしくは検索で「Виктор Цой / Лучшие песни 」辺りのキーワードを入れると沢山ベストアルバムが出てくるので試してみてください↓↓↓↓↓↓↓

 

Выставка-байопик “Виктор Цой. Путь героя”

時間:12:00 〜 22:00 月から金まで

11:00 〜 22:00 週末

場所:ЦЕНТРАЛЬНЫЙ МАНЕЖ, Г. МОСКВА, МАНЕЖНАЯ ПЛ., Д.1

値段:800〜1600ルーブル(平日・夜・祝日によって料金変動)

期間:現在のところツォイの誕生日である6月21日まで開催してるそうです。

公式サイト:http://www.tsoyhero.com