フェラーリのEV化で思い出す、イタリアの畑を走る「もうひとつのFerrari(フェラーリ)」の話

最近、イタリアのフェラーリが初の高級EV(電気自動車)を発表するというニュースを目にしました。

伊フェラーリ、初の高級EV「ルーチェ」披露 富裕層ターゲットに(2026年5月26日ロイター通信)

車好きの方々の間では、そのデザインや性能についてさまざまな議論が交わされているようですが、私は車に詳しくないので、フェラーリの新型EVのデザインがこうだーというのは疎いのです。

それでも、このフェラーリのニュースを聞き、今イタリアの片田舎にいる身分として一つ思い出すものがあります。

それは、農業機械メーカーとしての「Ferrari」。

多くの人にとって、Ferrariといえば真っ赤なスポーツカー、そして跳ね馬のエンブレムを思い浮かべ、もちろん私もその一人ですが、実はイタリアの農地を走りゆくFerrariというトラクターがあるのです。

【農業機械メーカーFerrariのサイト】https://ferrariagri.com/it-it/

丸文字のロゴと緑のカラーがトレードマークで、あのスポーツカーのイメージとは全然違いますね。

跳ね馬とは「赤の他人」のフェラーリ

ここで多くの人が「車好きなら誰もが知る、あの高級スポーツカーのフェラーリがトラクターを作っているの?」と思うかもしれません。

そこで色々調べると、まったくの別会社でした。

イタリアでは「フェラーリ(Ferrari)」という名前は、日本でいう「佐藤さん」や「田中さん」のようによく見かける苗字です。

農機メーカーのFerrariは、スポーツカーの創業者エンツォ・フェラーリとは別の「フェラーリさん」で、リーノ・フェラーリ(Lino Ferrari)が1954年に創業した会社ということが分かりました。

現在、この農業機械メーカーFerrariの正式な会社は、BCS S.p.Aという企業の傘下で活動をしており、日本でも有名な都市ボローニャがある『エミリア=ロマーニャ州』で誕生しました。ちょっと紛らわしいのが、高級スポーツカーのフェラーリも同じく『エミリア=ロマーニャ州』生まれなんですね。 ちなみにそれぞれ『エミリア=ロマーニャ州』のどこがご出身かと言うと、農業機械メーカーFerrariはレッジョ・エミリア県という西側で、高級スポーツカーのフェラーリはモデナ県という東側になりまる。同じ州で70kmほどしか離れていないご近所さんなのです。

車の形をした、ボトルを横にキープできるテーブル。 

さて、「フェラーリ」という名前はイタリアに多く存在するのが分かりましが、ちなみに、お酒が好きな方なら「フェラーリといえば、あの高級スパークリングワイン(スプマンテ)では?」と思うかもしれません。

実はそちらもまた、全く別の「フェラーリさん」が始めたワイナリー。出身は北にあるアルプス山脈の麓「トレンティーノ=アルト・アディジェ州」のトレントという街で1902年に誕生しました。

Ferrariのスプマンテ(スパークリングワイン) とある試飲会にて。

面白いことに、このワイナリーのフェラーリは、2021年から2024年までF1(フォーミュラ1)の公式スパークリングワインとして、表彰台での「シャンパンファイト」に使用されていました。

自動車のフェラーリとワインのフェラーリ。F1という同じ舞台で名前が並ぶと、「同じフェラーリという名前で、自動車メーカーと商標などでぶつからないのだろうか?」とつい思ってしまいます。でも実際には、両者は別々の「フェラーリ家」が築いたブランドで、長年それぞれの分野で共存しているの興味深いです。

なお、現在はフランスのシャンパンメーカー「モエ・エ・シャンドン」がF1の公式パートナーを務めているみたいです。

そんな華やかな「車」と「ワイン」のフェラーリが世界を魅了する影で、私がどうしても心惹かれてしまうのが、イタリアの農業を文字通り根底から支えてきた、この土っぽい「農機のフェラーリ」です。

田舎の一コマ。カフェの前にある駐車場に、乗用車と並んで停められたトラクター。

(終)