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イタリア最高峰のワイン生産技術者団体”アッソエノロジ(Assoenologi)”の全国大会を訪れるの巻

5月末、アッソエノロジ(Assoenologi)という、エノロゴ、つまり日本語で言う”ワイン用ブドウ栽培・醸造技術者”が集まる全国大会にプレスとして招待させていただきました。なんと、この「あれこれ日記*.。ワイン編」も、日本の読者の皆様への発信の場として認めてもらえたのかな……と、勝手に思っているのであります。今回は、その大会の様子を写真とともにレポートします。

さて、このアッソエノロジは、イタリア国内では最大級のエノロゴ職能団体で、全国に4,000人以上の会員がいるそうです。

そして何よりも、この組織の会長であるリッカルド・コタレッラ氏は、単に「有名な醸造家」というだけでなく、世界的に活躍するエノロゴの一人。

彼は、世界中のワイン造りのコンサルタントとして活躍する一方、生産の立場からだけでなく、消費者にワインの魅力を伝える活動にも力を入れています。毎年開催されるイタリア最大級のワインの祭典「ヴィニタリー(Vinitaly)」でも、自らが関わってきた世界各国のワインを紹介する案内役を務めるなど、その存在感はイタリアワイン界を代表する一人と言っても過言ではないでしょう。

Assoenologi公式サイトはこちら 

さらに「どんな人なの?」と思われた方はこちら     今回の大会で熱いメッセージを語っていたリッカルド・コタレッラ会長です。(Assoenologi公式プレスリリース)

この大会は、毎年イタリア各地で開催している全国大会で、今年の開催地はヴェネト州のコネリアーノ。世界的なスパークリングワイン”プロセッコ”の産地として知られるワインの街が選ばれました。

コネリアーノの風景。なだらかな丘陵がどこまでも続く、私の好きな景色。この街に住んでいたこともあるので、ちょっとノスタルジー。

会場となったのは、このコネリアーノ近郊に位置する、サンタ・ルチア・ディ・ピアーヴェ。中世から続く歴史ある町です。コネリアーノ駅から少し離れています。

この地域は、北イタリアのアルプス・ドロミーティを源流とし、ヴェネツィア近郊を経てアドリア海へと注ぐ「ピアーヴェ川」の流域にあります。古くからこの川沿いは人や物資が行き交う交通の要所だったことから、ヴェネツィア共和国とアルプスの向こうの国々との交易でも栄え、ヨーロッパ各地から多くの商人が集まったそうです。

当時、この一帯では馬や牛、ロバ、羊、豚などの家畜をはじめ、麻や羊毛、布地といった品物が盛んに取引されていたそうで、今では静かな場所ですが、当時はさぞかし活気に満ちていたんだろうな、と、その頃の様子を想像してみました。

サンタ・ルチア・ディ・ピアーヴェ会場。アッソエノロジ全国大会の会場。かつての製糸工場をリノベーションした建物。

 




会場の入り口には、今回のイベントの広告バナーがあり、なんと、この全国大会は今年で79回目を迎えるそうです。

79回目とは!来年で、80回目ですね。

建物の中に入ると、広い空間、そこに関係者が沢山!

正直なところ、会場に来るまではどんな雰囲気の大会なのか全く想像をしてなく、実際に見てみるとその規模の大きさにびっくり。この年次全国大会は3日間にわたって開催され、ワインづくりの専門家であるエノロゴたちの情報交換はもちろん、行政や大学、研究機関、ワイナリー、関連企業、メディアなどが一堂に会する、イタリアのワイン業界を代表するカンファレンスでもあります。

こんなすごい空間にいるだけで、モチベーションが上がります。

来場者はイタリア全国から集まっているので、会場ではさまざまな地域のイタリア語が飛び交っていました。トスカーナらしい話し方が聞こえてきたかと思えば、別の地域のアクセントも聞こえてきて、わ、全国大会なんだな、と実感。

そして、やはりワイン業界でよくあるあるの、男性社会。それでも、登壇者を含め女性の参加者も思っていた以上に多く、女性が活躍する場も普通になってきているのだなと感じました。

私が参加した日は、イタリアワインの国内市場と輸出の現状、ワイナリー経営、ドイツ市場の動向をはじめ、デジタル化やコミュニケーション、新しい醸造技術、さらには気候変動がブドウ栽培に与える影響まで、実に幅広いテーマについて講演や討議が行われました。

そしてその後は、フランスのシャンパーニュと、前回のブログでもご紹介したイタリアの伝統的なスパークリングワイン製法「メトド・クラッシコ(瓶の中で泡を生み出す伝統的な製法)」のテイスティングが行われました。イタリア代表として登場したのは、前回ご紹介した「フェッラーリ」↗︎。実際にフランスとイタリアのワインを飲み比べながら、それぞれの特徴を学ぶという内容でした。

こちらはフランスのワイン。同業者同士で会場で知っている人が多いから、試飲タイムはおしゃべりで会場がざわつく。

お昼は、参加者全員が円卓を囲んでランチタイム。それぞれの立場を超えて情報交換をしたり、新しい出会いが生まれたりと、こうした横や縦のつながりを築く時間も、この大会の大切な役割なのだと感じました。

少し食べた後。。。パイをチーズとバジルのペーストで焼いたもの。後ろに食べかけのパンが写ってしまった。。

そして、地元のワインもずらりと円卓に並びます。ワインだけ飲むのではなく、このようにちゃんとお食事と共にワインを飲むというこのコンセプト、イタリアらしいなと思います。

今回ヴェネト州開催なので、ヴェネト産のワインが沢山並ぶ。

そして午後は、コネリアーノ周辺のワイナリーを訪問。参加者がとても多いため、いくつかのグループに分かれ、それぞれ異なるワイナリーへ向かいました。




私が今回訪れたのは、IL COLLEというワイナリー。この地域を代表するスパークリングワイン「プロセッコ」を造っているワイナリーです。日本でも購入できるみたいです。

セラー見学

ワイナリーはコネリアーノ駅から車で15分ほど、なだらかな丘陵地帯にあります。少し小高いところにある、とても素敵なロケーションです。

4世代続く家族経営ながら、地元の契約農家とも連携し、年間約1500トンものブドウを扱う中堅ワイナリーでもあります。ファミリー経営と聞くと小規模なワイナリーを想像しがちですが、流石この生産量はプロセッコ産地ならではのスケール感!

このワイナリーでは、一部のワインで独自の醸造方法も採用しているとのことで、それによって酸化防止剤(亜硫酸塩)の使用量をできるだけ抑えながら、ブドウ本来のフレッシュな香りや味わいを引き出すことを目指しているそうです。

個人的に一番印象に残ったのは、ブドウは一房ずつ手摘みで収穫される一方、セラーでは想像以上に多くの機械が活躍していること。伝統と最新技術をうまく組み合わせて品質を支えているんですね。

私は普段から飲み慣れていることもあって、誰が何と言おうと、やっぱりプロセッコが好き。

ということで、今回はこのあたりで、Assoenologi全国大会のレポートを終わりたいと思います。

(END)




フェラーリのEV化で思い出す、イタリアの畑を走る「もうひとつのFerrari(フェラーリ)」の話

最近、イタリアのフェラーリが初の高級EV(電気自動車)を発表するというニュースを目にしました。

伊フェラーリ、初の高級EV「ルーチェ」披露 富裕層ターゲットに(2026年5月26日ロイター通信)

車好きの方々の間では、そのデザインや性能についてさまざまな議論が交わされているようですが、私は車に詳しくないので、フェラーリの新型EVのデザインがこうだーというのは疎いのです。

それでも、このフェラーリのニュースを聞き、今イタリアの片田舎にいる身分として一つ思い出すものがあります。

それは、農業機械メーカーとしての「Ferrari」。

多くの人にとって、Ferrariといえば真っ赤なスポーツカー、そして跳ね馬のエンブレムを思い浮かべ、もちろん私もその一人ですが、実はイタリアの農地を走りゆくFerrariというトラクターがあるのです。

【農業機械メーカーFerrariのサイト】https://ferrariagri.com/it-it/

丸文字のロゴと緑のカラーがトレードマークで、あのスポーツカーのイメージとは全然違いますね。

跳ね馬とは「赤の他人」のフェラーリ

ここで多くの人が「車好きなら誰もが知る、あの高級スポーツカーのフェラーリがトラクターを作っているの?」と思うかもしれません。

そこで色々調べると、まったくの別会社でした。

イタリアでは「フェラーリ(Ferrari)」という名前は、日本でいう「佐藤さん」や「田中さん」のようによく見かける苗字です。

農機メーカーのFerrariは、スポーツカーの創業者エンツォ・フェラーリとは別の「フェラーリさん」で、リーノ・フェラーリ(Lino Ferrari)が1954年に創業した会社ということが分かりました。

現在、この農業機械メーカーFerrariの正式な会社は、BCS S.p.Aという企業の傘下で活動をしており、日本でも有名な都市ボローニャがある『エミリア=ロマーニャ州』で誕生しました。ちょっと紛らわしいのが、高級スポーツカーのフェラーリも同じく『エミリア=ロマーニャ州』生まれなんですね。 ちなみにそれぞれ『エミリア=ロマーニャ州』のどこがご出身かと言うと、農業機械メーカーFerrariはレッジョ・エミリア県という西側で、高級スポーツカーのフェラーリはモデナ県という東側になりまる。同じ州で70kmほどしか離れていないご近所さんなのです。

車の形をした、ボトルを横にキープできるテーブル。 

さて、「フェラーリ」という名前はイタリアに多く存在するのが分かりましが、ちなみに、お酒が好きな方なら「フェラーリといえば、あの高級スパークリングワイン(スプマンテ)では?」と思うかもしれません。

実はそちらもまた、全く別の「フェラーリさん」が始めたワイナリー。出身は北にあるアルプス山脈の麓「トレンティーノ=アルト・アディジェ州」のトレントという街で1902年に誕生しました。

Ferrariのスプマンテ(スパークリングワイン) とある試飲会にて。

面白いことに、このワイナリーのフェラーリは、2021年から2024年までF1(フォーミュラ1)の公式スパークリングワインとして、表彰台での「シャンパンファイト」に使用されていました。

自動車のフェラーリとワインのフェラーリ。F1という同じ舞台で名前が並ぶと、「同じフェラーリという名前で、自動車メーカーと商標などでぶつからないのだろうか?」とつい思ってしまいます。でも実際には、両者は別々の「フェラーリ家」が築いたブランドで、長年それぞれの分野で共存しているの興味深いです。

なお、現在はフランスのシャンパンメーカー「モエ・エ・シャンドン」がF1の公式パートナーを務めているみたいです。

そんな華やかな「車」と「ワイン」のフェラーリが世界を魅了する影で、私がどうしても心惹かれてしまうのが、イタリアの農業を文字通り根底から支えてきた、この土っぽい「農機のフェラーリ」です。

田舎の一コマ。カフェの前にある駐車場に、乗用車と並んで停められたトラクター。

(終)