イタリアワインを語る前に、まず”農業”を語るの巻ー1 欧州篇

イタリアにおけるワインを綴る前に、先ずはワインが食品である事、そしてワイン造りが農業の一部であることが大前提なことを触れておこうと思います。

この回では、イタリアにおいて農業はなにか、現地で感じたことも交えて写真と一緒に書いていきます。前後篇の2回に分けてお届けしますので、ぜひあわせて一読くださると嬉しいです。

ヴェネツィアのキャベツ畑

農業大国の欧州

欧州と聞いて、なだらかな緑の丘陵に牛がのんびりと草を食む、そんな牧歌的な風景を思い浮かべる人は少なくないでしょう。

実際、そのイメージは決して間違いではありません。ヨーロッパは世界有数の農業地域であり、その背景には戦後の歴史があります。

第二次世界大戦後、欧州各国は深刻な食料不足を経験しました。この反省から、食料自給率の向上と農家の所得を保障することが重要な政策課題となり、その議論を長年リードしてきたのがフランス。

実際、農業産出額(2024年)*1を見てもフランスが894億ユーロで断トツの首位、僅差でドイツ(755億ユーロ)、イタリア(754億ユーロ)、スペイン(675億ユーロ)が続いています。

ちなみに、この政策は1962年に創設された「共通農業政策(CAP: Common Agricultural Policy)」というものです。話が長くなるのでご興味のある方はネット検索やwikipediaを覗くと面白いと思います。

さらに面白いのが、欧州全体が「連合体」として機能していることです。一国だけであらゆる食料を効率よく生産するのは難しいので、気候や風土の異なる加盟国が、それぞれ得意分野を活かしながら域内で補完し合っています。

例えば、デンマークでは酪農や畜産、オランダは園芸が盛んです。フランスやポーランド、ルーマニアでは穀物生産が大きな役割を果たし、地中海性気候のイタリアやスペインではブドウやオリーブ、果樹栽培が盛んです。

放牧されている牛 北イタリアにて

欧州の中のイタリア

さて、イタリアにフォーカスしてみると、ここまで見てきた通りイタリアは欧州有数の農業国の一つです。実際に地形を見てみると、少し日本と似ているところもあります。国土が南北に長く、地域によって気候帯が異なります。

実際の地形は調べてみると、下記の通り。

平地(pianura):23.2%

丘陵地(collina):41.6%

山地(montagna):35.2%

出典:ISTAT(イタリア国家統計局)公式統計より*2

丘陵地と山地を合わせると、国土の約8割を占めます。よく小麦畑の風景として想像する、アメリカやオーストラリアの見渡す限りの平地をコンバインが行き交うようなイメージとは程遠く、イタリアは限られた平地と丘陵地を使った農業を営んできた国。ただしアルプスの一部を除けば、山も丘陵も比較的なだらかな地形が多く、人の手を根気強く入れることで、古くから農地へと作り変えられてきたのです。

イタリアを旅すると感じますが、丘陵地の斜面をテラス状に切り開き、ブドウやオリーブを栽培する文化が古代から続いている。そして各所にある村にも、今もそれなりの人が暮らしているのは驚くべきことです。実際、イタリア国家統計局(ISTAT)*3の統計によれば人口の38.7%が丘陵地に住んでおり(平地49.2%に次ぐ、山地はわずか12.1%)、丘陵地は決して過疎地ではなく、今も主要な生活圏・生産圏として機能している、これは日本の山間部とはやや違ったところかもしれません。

もっとも、ここまで農地を広げてきたとはいえ、イタリアがすべての農産物を自給できているわけではなく、いろいろな事情でデュラム小麦や軟質小麦など、品目によっては輸入に頼っている一面もありますが、ここでは深入りをせずに、詳しくはまた別の機会に触れたいと思います。

では、イタリアは何で勝負しているのか。ここからが、イタリア農業の面白いところです。

その答えの一つが、DOP・IGP(原産地呼称)制度。

========>>>> 後半へ続く

参考資料:

*1)Eurostat “Performance of the agricultural sector”  https://ec.europa.eu/eurostat/statistics-explained/index.php?title=Performance_of_the_agricultural_sector

*2)ISTAT(イタリア国家統計局)公式統計より, 2013年公表データ, 2011年国勢調査に基づく市町村面積集計” Superficie territoriale e urbanizzazione” https://www.istat.it/non-categorizzato/principali-dimensioni-geostatistiche-e-grado-di-urbanizzazione-del-paese/

 *3) ISTAT「Annuario Statistico Italiano 2022(イタリア統計年鑑)」 https://www.istat.it/storage/ASI/2022/capitoli/C01.pdf

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